みなさんは安野 光雅という絵本作家をご存知でしょうか?
私は子供の頃、この人の書く絵本を食い入るように眺め何度も何度もページをめくりました。それこそ、数百回は読み返したと思います。普通絵本はストーリーがあっていくら子供といえども、何度も何度も読めば内容を覚えてしまって同じ本は飽きてしまいます。ただ安野 光雅さんの絵本はあきることがありませんでした。なぜなら、安野さんの絵本には文字が無いものが多いんです。だから何度見ても飽きが来ないのです。
例えば画面の一部分に注目してみると旅人がいたり、風船が飛んでいたり、子供達が遊んでいたりします。ページをめくるとその登場人物やものが違った形で掲載されていたり、旅のお話ではその土地土地の有名人が登場していたりします。そういった細かな変化が想像をかき立て、きっとこんな話をしているのだろうとか、次のページではどうなっているのだろうと考えるとワクワクしてきます。
細かな水彩画で淡いトーンの優しい画面の中には様々な人生が描かれ、森では動物達の息づかいが聞こえてくるようです。
安野 光雅さんは今もご健在で御歳、88歳。世界中で絵本が評価され様々な賞を受賞されています。まだまだ現役で良い作品を生み出してほしいですね。
略歴
1926年(大正15年)3月20日、島根県津和野町の旅館を営む家に生まれる。1940年(昭和15年)山口県立宇部工業学校採鉱科に入学[1]。1944年1月、宇部工業学校を繰り上げ卒業、住友鉱山に就職し忠隈鉱業所(飯塚市)へ[2]。1945年4月応召、香川県王越村(現坂出市)にて上陸用舟艇の秘匿場建設に従事。復員後、1946年、敗戦直後の混乱期に無資格のまま山口県徳山市(現・周南市)で小学校の教員を務める[3]。のち山口師範学校(現・山口大学教育学部)研究科を修了し、1949年(昭和24年)に美術教員として上京。約10年間三鷹市の三鷹市立第五小学校や明星学園や武蔵野市の武蔵野市立第四小学校で教師を勤めるかたわら、玉川学園出版部で本の装幀、イラストなどを手がけた。明星学園・国語部、教育科学研究会・国語部会などによる日本語指導(言語の教育)のテキスト『にっぽんご』シリーズの装幀も手がけたのもこの頃である。この小学校教諭時代の教え子に後の筑摩書房取締役の編集者・松田哲夫がおり、そのつながりで同社の多数の本の装丁をしている。二紀会に所属していたが、食べるための仕事のために出品できなくなり、1960年代に退会。
35歳のとき教師を辞して絵描きとして自立。1968年(昭和43年)、42歳の時に刊行された最初の絵本『ふしぎなえ』(福音館書店)で絵本作家としてのデビューを果たす。『ふしぎなえ』は、1961年にフランスを旅したときに目にしたエッシャーの絵に大きな影響を受け不可能図形の不思議な世界を描き、世界中で評判となった代表作である。エッシャーからの影響についてはエッセイ「『ふしぎなえ』について」(「空想工房(平凡社)」)で自ら「エッシャーの作品に魅せられて呪いにかかった」旨を述べている。
安野光雅美術館その後次第に世界的評価が高まり、絵本は世界各国で翻訳された。文学にも詳しく、著作は多数あり、画家としても数多くの作品を発表し、司馬遼太郎の紀行文集『街道をゆく』の装画も担当した。大阪府立国際児童文学館(1984年開館)のシンボルマークも担当。
2001年春に、故郷津和野町に多くの作品を、常時展覧する「安野光雅美術館」が開館した。2011年夏に神奈川近代文学館で、展覧会「安野光雅の世界」が開催。WIKIより
それでは、大人も子供も楽しめる、素敵な安野さんの絵本をいくつかご紹介致しましょう。
■何が隠れているんだろう?『もりのえほん』
もりのえほんは文字通り、もりの絵が延々と続くえほんです。文字もなく、画面には木々が書かれているだけです。
ただ、よーく木々を見つめていると木々の間に、繁った葉の中に、草むらに――この絵本の森の中には、ゾウやリスなど130余りの動物がかくされています。広く海外でも出版されとても高い評価を受ける作品です。
一見、何もないように見えるところに隠れている動物を見つけると大人でもうれしいものです。お子さんがいるご家庭にプレゼントなどされるととても喜ばれると思います。今度のクリスマスなどに一冊いかがでしょうか?
■どこかがおかしい?『ふしぎなえ』
下に流したはずの水がいつのまにか上に戻ってきてまた下に流れてゆく…あがってもあがっても下へいく階段。どうしてもさかさまに歩いてしまう横断歩道。そんなふしぎな世界が次つぎとくりひろげられています。
エッシャーのだまし絵に着想を得たのの絵本。子供にも分かりやすいように小人達が楽しげにこの不思議な世界で暮しています。時には流され、時には転んで落っこちたり…でもこの不思議な世界では大丈夫なのです。何せ不思議な世界ですから。
このえほんは昔から人気があって、こちらも大人も子供も楽しめる一冊ですね。
■下面の隅々にドラマが!『旅の絵本』
旅の絵本は旅の風景を描いた、字のない絵本です。船で岸にたどり着いた旅人は、馬を買い、丘を越えて村から町へと向かいます。ぶどうの収穫、引越し、学校、競走、水浴び・・・近代ヨーロッパの町並みや世界各地の日常の風景がこと細かに美しく描かれています。よく見ると、みんながよく知っているおはなしの世界も登場しています。
現在刊行数は8冊にも登り、中世ヨーロッパから始まり、イタリア、イギリス、アメリカ、スペイン、デンマーク、中国、そして最新刊はなんと日本です!
安野さんが世界中を旅して見て回った景色や文化などをちりばめて、本当に自分が旅に出たかのような気分にさせてくれる一冊なのです。文字が読めない小さなお子さんでも書かれていることや雰囲気は理解できます。なので、『これは何をしてるんだろうねぇ』と問いかけながら読み聞かせると、時に様々なストーリーが浮かび上がってきます。
特に文字がないこの作品は、画面の片隅の登場人物などがどこかでトラブルに卷き揉まれていたり、楽しげにパーティをしていたり、教会では結婚式が行われていたりと様々な人間模様が描かれているので、読まれた方のそれぞれのストーリーがうまれると思います。
小さな人物を捜してそこに起こるドラマを見つめていると時間が経つのも忘れてしまいます。安野さんの作品を読むなら、是非オススメの一冊です。
よく『ウォーリーをさがせ』などと比較されますが、そうした特定の目的がない作品なので、飽きずに何度も楽しめると思います。冬の夜長に一度眺めてみてはいかがでしょうか?