テニスの錦織圭選手は昨年に引き続き、ランキング4位を維持するなど絶好調で、巷もテニスブームに沸いております。街中のテニスコートと言えば、週末は予約が取れず今までにない盛況ぶり。たった一人のスターの登場のおかげでこんなにもひとつのスポーツにスポットが当たったことが、かつてあったでしょうか?本当に錦織選手はすごいですね!
昨年の大躍進のスタートともなったのが今月から始まるクレーシーズン。昨年はバルセロナで優勝、翌週のマドリッドでも決勝まで進みナダル相手に圧倒的なプレーを見せつけました。怪我で途中リタイアとなりましたが、“クレーキング”ナダル相手に2セット目までは赤子の手をひねるかの様な振る舞い。怪我で無理をしていたとはいえ、ペース配分、緩急、プレースメント、すべてに素晴らしい試合運びを見せました。未来の王者を予感させました。
今年の錦織選手の調子を占う上でも、全仏までのこのクレーシーズンが鍵となってくること間違いありません。
■ところでクレーコートって何?
クレーコートは主にレンガの粉(アンツーカ)などの赤土をならしたコート上で行われる大会で、昨年決勝まで残った全米のコート(ハードコート)とは違って、ボールの威力がコートにバウンドすることで減速し、通常のコートに比べて急速がやや落ちるコートとなります。
その為、普段なら決まっているエース級のポイントでも、球が遅いので相手が追いついてしまい、なかなかポイントが決まりません。ゲームはそのため長丁場になりやすく、タフなサーフェスとなります。1試合5時間を越えるような熱戦も多く、NHKが試合がすぐ決まる高速コートのウインブルドンは中継しても、全仏は長年中継しない点もこの部分が大きいと思います。
このクレーを得意としているのが、スペイン勢。スペインではクレーのコートが多数あり、子供の頃から土の遅いコートに慣れているため、スペイン勢と言えばタフなストローカーが多いのも特長です。
その中でも群を抜いているのがラファエル・ナダル。テニス史上最もクレーで負けない男です。特に赤土の全仏オープンでは初参加の2005年から1回しか負けておらず、66勝1敗(勝率98.5% )とクレーキングっぷりを遺憾なく発揮しております。負けた1回も当時テニス界では絶対王者だったフェデラーの全盛期の時です(年間勝率が9割弱、この年のグランドスラムすべて決勝進出)。いかに彼がこのサーフェスを得意としているかが分かります。
怪我の影響からか、今年は今ひとつピリっとしない成績ですが、このシーズンに合わせて体調を整えてくることでしょう。今年もダントツの優勝候補です。
■錦織選手を脅かすネクストジェネレーション
ここ数年のテクノロジーの進化によってテニスというスポーツも大分様変わりして、新しいラケット、新しいスイング軌道、新しい戦術によってネクストジェネレーションの台頭が著しくなっております。
ただ、ここ10年ではナダル以外の優勝者は2009年のフェデラーだけと言う異常事態。もちろん今クレーでは絶対王者なのですが、昨年の錦織選手があと一歩まで追いつめた状況や今ナダルは負傷明けであまり調子が良くないことを考えると、王者の牙城を崩すのはそう遠い日ではないのかもしれません。
個人的には錦織選手にこのまま好調を維持して初のグランドスラムタイトルを師匠のマイケル・チャンと同じく、この全仏で掲げてほしいと思っております。
そんな、錦織選手と同じネクストジェネレーションと言われる若手の有望株を2人ご紹介しましょう。
一人目はオーストラリアのタナシ・コッキナキス(Thanasi Kokkinakis)選手。96年生まれの19歳。昨年は楽天オープンの予選にきておりましたね。
あと一歩で本戦出場というところまできましたが惜しくも惜敗。ランキングも107位(2015年4月6日時点)とまだまだな選手ですが、196センチから打下ろされるサーブ、そしてパワーのあるストロークと爆発力のある選手です。
まだ、日本語のWIKIもない状態の無名の選手ですが、先日行われた全豪オープンでは地元の声援の後押しもあってか、本戦の2回戦まで進出。マスターズ大会のBNPパリバ・オープンでも4回線まで駒を進めてきました。
ランキング的にはまだ本戦にストレートインできるか出来ないかのギリギリのラインの選手ですが、個人的に大注目の選手です。
彼の良いところは長身を活かした伸びのあるフォアハンドストロークと柔らかいタッチのボールコントロール。まだまだ荒削りではありますが、ペースの遅いクレーコートでは、いかに相手の裏をかいた配球を出来るか、よりチャレンジして自分から強い球を打ってゆけるかが問われていますので、コッキナキス選手にとっては相性のいいサーフェスだと思います。
また、甘いマスクで女性にも大人気なので、今後テニスブームがさらに大きくなった時には注目を浴びるのではないかと思います。まだ20歳前の選手なので、この一年でどれだけランキングを伸ばしてくるか楽しみです。
次にご紹介するのはオーストリアの21歳、ドミニク・ティエム(Dominic Thiem)選手。シングルスランキングは現在43位。ランキングをぐんぐん上げている若手の有望株です。
ドミニク・ティエム(Dominic Thiem, 1993年9月3日 – )は、オーストリア・ウィーナー・ノイシュタット出身の男子プロテニス選手。現時点では、まだATPツアーでシングルス・ダブルスともに優勝はない。右利き、バックハンド・ストロークは片手打ち。自己最高ランキングはシングルス36位、ダブルス239位。WIKIより
ニックネームはドミネーター“Dominator”、昨年は世界ランク3位だったワウリンカにも勝利を挙げトップ10以内の選手にも勝利、全米では4回戦にも駒を進めてきました。
プレースタイルは早め早めで相手をコートの外に追い出すファストストライカーで、伸びのあるフォアハンドと爆発力のあるシングルバックハンドが特長です。
フェデラーやワウリンカなどシングルバックハンドが今、復権してきましたが、有利な点はより遠くの球をスイングスピードを上げて叩けるという点です。ダブルバックハンドは両手の力を利用できてパワーはありますが、その分手が届く範囲は短くなり、フットワークが求められます。それとは逆により遠くの球が届くシングルバックハンドは力が出ない分、バックスイングをより大きくとる必要があり、準備に時間がかかります。
どちらも一長一短なのですが、より鋭角に鋭いボールを打てるのはシングルバックハンドではないかと思います。ドミニク・ティエム選手はフォアバック共に攻撃的な角度のある球を打つのが特長で、ワイドに展開できれば、その分相手が走る距離が長くなるので、クレーコートではよりその特長が生きてきます。
かつて全仏でナダルと対決した際には、彼のことをこう評しています。
「彼は、トップスターになるチャンスがあるし、このトーナメントでよく戦っていた。大きなポテンシャルがあると思うし、我々の立場が入れ替わってもおかしくないプレーヤーの1人だ。彼のテニススタイルは、本当に良い。彼が取り組むべきことはフットワークとコート上の動き、それだけさ。」
ナダルも認めた才能の片鱗。これが今年どう花を咲かせるのか、注目しております。
コッキナキス選手、ドミニク・ティエム選手双方とも全仏にまではランキングを上げ、ストレートインしてくると考えております。クレーシーズンでこの2人のニュースなども錦織選手と合わせて取りあげられるかもしれません。是非みなさんこの2人にも注目して5月から始まる全仏オープンを楽しんでください。
一足早い全仏オープン情報でした!