11月になり秋もすっかり晩秋の装いを強めてまいりました。すっかり私もスポーツの秋、もとい食欲の秋を満喫しておりますが(汗)、秋と言えば読書の秋というのもありましたね。
一昔前までは電車の中と言えば、折り畳んだ新聞か文庫本の読書と相場は決まっておりましたが、すっかり最近はスマホに押されてしまい、老若男女ゲームやらネットやらで本を片手にする方をめっきり見かけなくなりました。読書好きとしては寂しい光景でもあります。
活字を追うのは面倒だなとか、何か難しそうで眠くなっちゃうという方もいるので無理には読書をお勧めしませんが、マンガの様に絵柄とストーリーが同時に読めるとなったら映画を見ているみたいで、取っつきやすいのではないでしょうか?
そんな、ちょっと読書は苦手という方におススメする、ストーリーが魅力なマンガ家さん『オノ・ナツメ』さんを今回はご紹介したいと思います。
オノ・ナツメさんは1977年生まれの女性のマンガ家さんで、来歴は高校卒業後、社会人の時に小野夏芽名義で同人活動を開始。2001年にイタリアで10ヶ月の語学留学を経験。帰国後、2003年にウェブコミック雑誌『COMIC SEED!』11月号(ぺんぎん書房)に掲載の「LA QUINTA CAMERA(ラ・クインタ・カーメラ)」でデビュー。2005年から『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)で連載した「リストランテ・パラディーゾ」で注目を集める。(WIKIより)
テレビでもいくつかアニメ化されているので、ご存知の方も多いかと思います。別名義でボーイズラブなども手がけられているので、めがね紳士がお好きな腐女子と呼ばれる方々にも絶大な人気を博しておりますね(ここは割愛させていただきます)
私が彼女の作品を手に取ったのは書店でのお試し読みの数ページでした。かなり独特のタッチの絵柄なので、好みは分かれるかもしれませんが、それを微細なことの様に感じるストーリーの重厚感はものすごいです。たった数ページの試し読みで、物語の設定の緻密さやライトなタッチにやられてしまいました。
おしゃれな絵柄ですが、作品ごとに絵柄を変え、見事な構成で主人公が置かれる裏悲しい状況や心情を言葉少なに見事に描ききっています。そんな彼女の代表作をいくつかご紹介したいと思います。
■気の弱い用心棒さてその腕前は…
おしゃれな絵柄を得意とするオノナツメさん、舞台はイタリアだったりNYだったりそう言う絵柄にぴったりだなと思っていたら、時代物も書かれておりました。その名も『さらい屋五葉』人さらいを生業とする犯罪者集団『五葉』の一味になぜかなってしまった気の弱い主人公の侍、秋津政之助。
政之助は腕は立つのだが、人前に出ると大の上がり症で藩からも暇を出され、用心棒などの仕事を探すが、どれもこれもうまく行かない。そんな折り、なぜかこの犯罪者集団に見込まれ生活を共にするようになるのだが…
五葉とは5人の盗賊のことで、それぞれの得意分野を使って人を拐かし、金持ちから金品をせしめるという義賊のようなことをそれぞれ行っている。ただ皆それぞれに過去があり、お互いを信用しきっておらず、カネだけで繋がっているようなドライな集団。そんな中、純朴な政之助が仲間に加わったことで他の仲間たちにも心境の変化がうまれてくる様子が描かれています。単純に政之助のサクセスストーリーではなく、身を切られるような辛い出来事や、拐かした相手にも物語があり、それぞれの立場が重なり合って様々な人間ドラマが描かれてゆきます。
こういった難しい人間ドラマを重くなりすぎずに、描くのはとても技量のいることで少年マンガの様な分かりやすさこそありませんが、ひとつの作品を読み終えたあといい映画を見たようなそんな気持ちになることでしょう。アニメでも放送されていたので、もし気になる方はそちらから入られてもいいかもしれませんね。ただ、オススメは自分の間で読める、マンガです。コマ感をうまく伝えるオノさんならではの表現が堪能できると思います。
■少年イアンが振り返る人生とは…
私が初めて彼女の作品を手に取ったのがこの作品。これから読まれる方もいるかと思うので、大きなネタバレはしませんが、とにかく読み終わったあと心が痛くなるようなそんなお話でした。
物語の冒頭、主人公のイアンを見守るジムはこう呟きます。『お前の人生はすごい、お前のことを小説にする』と。小説になるような人生ってなんでしょうね。そんな人生があるとしたら、自分は望むでしょうか…
このお話は題名通りにシンプルでない家族、血縁、人間関係、経済環境、性差などごちゃごちゃに絡みあっています。主人公イアンはそれでも家族のぬくもりを求めて、様々な人と関わってゆきます。家族に翻弄されながら、ただ一つ求めたのは「家族だから、そばにいたい」という想い。
読後にすっきりするたぐいのお話ではないので、マンガはハッピーエンドじゃ無いと!って方にはおススメしませんが、小説でも読みたいなって方にオススメの一冊です。
登場人物が外人がほとんどなので、絵柄的に書き分けが微妙で誰が誰だっけ?みたいなことになるのですが、そこもまたオノさんの味ということで、少し行きつ戻りつしながらページをめくってゆくと、心に響く物語がつまっていると思います。
寒い秋にぴったりの一冊だと思いますので、お気になった方は手に取ってみて下さい。