3月は雪が降ったかと思えば、夏日のような日が続いてあっという間に葉桜の季節となりましたね。今年こそはのんびりとお花見をしたい!と思っていたのですが、季節の方が駆け足で過ぎ去ってしまったようです。
テニス界も春のハードコートシーズンが終わり、いよいよクレーコートシーズンの到来です。土の季節といえば、話題の『アノ人』も万全の体制でツアーに戻ってきてくれると思います。
さて、このシーズンの注目の選手とは?そもそもクレーコートって何?みたいなところから始めてみましょう。
■クレーコートって何?
日本でテニスといえば、昔はクレーコートでした。中学校のソフトテニスの部活もクレーコートで、写真のように赤土ではなく、本当の土コートでした。これをイエロークレーと言うそうです。
この土、ただの土かなと思いきや、ある程度の規定があって、花崗岩の風化した真砂土でできているようで、スライドしやすく、ハードコートに比べると足への負担が少なく、土なので水はけもまずまずで、メンテナンスも容易です。
海外のプロの試合などで使われるレッドクレーはアンツーカーと呼ばれる高温焼成したレンガなどの土を粉砕してつくられる赤褐色の土を用いて、コートを作成しています。語源はフランス語で「どんな場合でも」を指す”en tout cas”で、いわゆる全天候と言う意味。
アンツーカー自体が多孔質焼成土なので、芝のコートよりも水はけがよく、雨天などが続いた後でも、すぐに整備してプレーが行えると言う点がメリットだったようです。現在では人工芝のオムニコートなどが出てきてしまっているので、全天候と言う点では劣りますがイエロークレーと同じく、足への負担が少なく、プレーヤーには優しいコートです。(靴下は汚れますがw)
ハードコートに比べると球足が遅くなる一方、バウンドが高く弾むため、ポジショニングが下がり目となるのでストロークやフットワーク優れるタイプが有利になる傾向で、プレースメントが重要となります。そのため、戦略的でタフなプレーヤーが有利となり、他の芝やハードコートなどとは一味違ったクレーのスペシャリストが活躍するシーズンでもあります。
■一癖も二癖もあるクレーコートの覇者たち
かつて絶対的な世界ナンバーワンになった選手でさえ、どうしても勝てないという事が起こるのが、全仏をはじめとする赤土のシーズン。
レジェンドと呼ばれたピートサンプラスは通算286週世界ランキング1位に君臨しましたが、レッドクレーの全仏だけはついに取ることはできませんでした。
同じくブンブンサーブでグランドスラム6勝を挙げたボリス・ベッカーや、サーブアンドボレーで金髪をなびかせ女性にも大人気だったテニスの貴公子ステファン・エドベリも全仏の賜杯を掲げることはできませんでした。
苦手とするどの選手もサービスとボレーが得意な選手で、球速が極端に遅くなるクレーでは他のサーフェスのようにコートを支配することは難しかったようです。
逆に圧倒的な強さを見せるのは土魔人ことラファエル・ナダル選手です。クレーコートでも生涯成績は9割を超え、全仏は10回の優勝とこのシーズンの覇者でもあります。
古くはグスタポ・クエルテン選手もこのシーズン大活躍しており、スペイン、ブラジル勢がこのシーズンは特に結果を残しています。
それは単純にクレーコートが多い地域であることも関係しているのですが、ユース世代からの育成方法に特徴があり、球足が遅く弾むコートではエンドラインぎりぎりの『深い』プレースメントで、回転がかかった『重い』球を返し、相手をコートの外に追いやって勝つというパターンを繰り返し試合の中で学び、プレー中の素早い判断で配球を学ぶと言うことが徹底されているから。
走ってそれに追いつかなければ、試合では勝てないので自然とジュニアのトップ選手はタフになって、走力でも差が出てきます。
同じように遅いコートでも、日本で普及しているオムニコートはバウンドが低く返しやすいコートなので、クレー選手のように走り回らずとも浅いポジションで返球できるため、世界との差が広がっていると言われる一因でもあります。
■今年注目のクレーの試合巧者は?
強烈なスピンで前後左右、相手を揺さぶるプレーで現在もトップ10にいる若手のホープ『ドミニク・ティーム』。片手のバックハンドはパワフルでとても華がある選手です。
ツアー優勝8大会のうち、6大会がクレーと次世代クレーキングの称号をほしいままにしています。今年も2月のアルゼンチン(クレー)を優勝し、全仏を射程に入れてきています。
自分から打っていけるタイプの選手なので、自分でペースを作れる遅いコートでは相手を支配できるプレーが随所に現れ、好調時のナダルのようなプレーが見られます。
今年のクレーシーズンも彼のプレーから目が離せません!