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特集記事【2007年8/20日号】

長きに渡って政治や経済、文化の中心地として栄えた京都。室町時代以降、各地の大名は幾度となく京都へ足を運び、その素晴らしさに触れ、京の文化を吸収して自国へ持ち帰りました。京風の建築、しきたり、祭り・・・これらが土地土地に根付き、今もなお歴史情緒漂う町並みを残している地を、人は「小京都」と呼びます。

小京都は、単なる「京都のミニチュア版」ではありません。長い月日を経て、その土地の気候や風土、古来から伝わる習わしなどと混ざり合い、独自の歴史文化が育まれてきました。万葉集が編まれた時代から、京都の貴族達の間でもてはやされてきた「紅葉狩り」の習慣も全国へ飛び火し、その土地の自然と相まって、独自の紅葉絵巻を私達に見せてくれます。さっそく、この秋おすすめの2つの小京都をこれからご紹介しましょう。
京都に勝るとも劣らない「秋の小京都」。まずご紹介したいのは、江戸時代に建てられた民家がそのままの姿をとどめる地、飛騨高山です。家々の出格子が連なり、軒下には用水のせせらぎ。幾年もの月日を経て、風格を漂わせる造り酒屋の立看板。「三町筋」といわれる古い町並は国指定の保存地区になっていて、秋になると、歩きながら遠くの山々の紅葉を愛でることができます。しかし、飛騨高山の秋は、この三町筋にとどまりません。紅葉の名所が多いこと、さらにその名所によって異なる風情を味わえることが小京都・飛騨高山の魅力です。

まず訪れたいのは、高山市街を一望できる城山公園。街中とは思えないほど木立が繁り、「森林浴の森日本100選」にも選ばれました。秋になると森の木々が赤や黄色に染まり、城跡との美しいコントラストを描きます。

ひとしきり森の散策を楽しんだら、公園の東側へ。山裾に連なるようにして古寺が点在し、東山寺院群を形作っています。これらの寺の紅葉を巡り歩くのには、全長4キロの東山遊歩道がおすすめ。遊歩道を歩くだけで、さまざまな木々の紅葉を満喫できます。遊歩道から程なく近いところに流れる江名子川の紅葉も見事。落葉シーズンになると真っ赤な紅葉が遊歩道を敷き詰めます。まさに小京都の秋といえるでしょう。
赤や黄色のコントラストもいいけれど、「一本の巨木」による紅葉もまたダイナミックですよね。そんな紅葉を目の当たりにしたい人は、飛騨国分寺へ足を向けてみましょう。境内には樹齢1200年を超える大イチョウがあり、例年11月になると黄一色に染まります。その姿は、まるで金色の大仏のよう。そびえ建つ三重塔とのコントラストの美しさは息を飲むほどです。

そしてもう一つ、訪れておきたいのは「飛騨の里」。豪雪地帯に耐え忍ぶ合掌造りなどの伝統民家が立ち並び、農山村の生産・生活用具が数多く展示されていて、いにしえの山村へタイムスリップしたような感覚に浸れます。そして秋になると、里は紅葉一色に。遠くに望む北アルプスと紅葉のハーモニーが絶妙です。また、10月27日から11月11日までは夜間開館が行なわれ、ライトアップされた「夜の紅葉」を楽しむことが可能。秋の夜長を存分に楽しんでください。

飛騨高山の魅力はそれだけにとどまりません。市街を挟む南部や北部にも森が広がり、錦の衣を纏った大自然の姿を見ることができます。ドライブをしながら紅葉を満喫したいなら、清見町を南北に走る飛騨せせらぎ街道がおすすめ。カエデ、ミズナラ、カラマツなどが錦秋の世界を演出します。とりわけ見事なのは、例年11月上旬に色づくカラマツが美しい西ウレ峠と、高さ30メートルの大倉滝を背景に広がる紅葉。遊歩道や公園が随所に整備されているので、車を降りて立ち寄ってみてはいかがでしょう。
   
宿場町として交通の要所でもあった飛騨の地は、江戸時代には米や桑などの「市」が開かれ、明治に入ると野菜や花が市に並ぶようになりました。そして「市」は今も健在。古い町並と同様に、この地に訪れたらぜひ足を運びたいのが朝市です。朝市は、古くから役所として機能してきた「高山陣屋」の前で開催される「陣屋前朝市」と、市内を流れる宮川沿いに立ち並ぶ「宮川朝市」の2つ。2つとも4月から10月は朝6時から、11月から3月にかけては朝7時から始まり、正午頃まで活気に溢れます。店を出す地元の人々とのやりとりもまた、旅の醍醐味のひとつです。

今の季節は、飛騨特有の細長いカボチャ「すくなカボチャ」をはじめとした野菜や果物が並びます。激しい寒暖の差が、食物に甘味と柔らかさをもたらすとのこと。赤カブとその葉、大根などを唐辛子とともに漬け込んだ、飛騨名産の漬物もぜひお土産にしたいところです。そして秋ゆえに注目したいのが、まつたけをはじめとしたきのこ類。きのこと飛騨牛を朴葉に乗せ、さらにその上に味噌をふんだんに乗せて焼いた料理も飛騨の名物料理といわれています。

ちなみに、飛騨の地でまつたけを味わいたいのであれば、期間限定でまつたけづくし料理を振舞っている「民宿すみれ荘」に訪れてみてもよいかも。土瓶蒸しや天ぷらなどで味わうことができます(要予約)。

紅葉と味覚、その双方を歴史情緒の真っ只中で感じる旅。それが秋の飛騨高山です。
   
住所:岐阜県高山市
お問い合わせ:0577-32-3333(高山市観光課)
ホームページ:http://www.hida.jp/(高山市観光情報)
 
 
紅葉はまず「山」で色づき、日を重ねるごとに「里」へ降りてくるものです。そのため、飛騨の地で真っ先に色づくのは北アルプス。例年10月初旬から10月中旬頃が紅葉の見頃です。全長3200メートル、東洋一かつ世界第2位のスケールを誇る新穂高ロープウェイに乗れば、眼下にはダイナミックな紅葉がじゅうたんのように広がる姿を見ることができます。また、この地は飛騨の奥座敷として「奥飛騨」と呼ばれる地。5つの温泉地が「奥飛騨温泉郷」を形成しています。

豊富な湯が川床から湧き、数々の露天風呂が楽しめる新穂高温泉や、アットホームな雰囲気が漂う栃尾温泉、歴史と伝統を感じさせる新平湯温泉、乗鞍岳の麓に広がる平湯温泉など、どの温泉にも個性があり、心の底から「癒し」を得られること請け合いです。市街からちょっと足を伸ばして、温泉の旅も同時に楽しんでみてはいかが?
 
全国京都会議に加盟している「小京都」のうち、最も北に位置しているのが青森県弘前。津軽10万石の城下町として約400年の歴史を誇り、街の中心には今もなお弘前城が美しく佇んでいます。一説によると、これまで日本には2万を超える数の城があったとか。時を経て城は消え、現在「天守閣」が残っている城は全国でわずか12。そのうちのひとつが弘前城です。

城下町であることの他にも、弘前が「小京都」たるゆえんがあります。それは「祭り」の文化が根付いていること。五穀豊穣を願う祭りや、自然を愛でる風雅な祭りなど、弘前を代表する4つの祭りは「弘前四大祭り」といわれ、一年を通じて多くの観光客が訪れます。

冬は500基に及ぶ大小様々な燈籠や雪像が立ち並ぶ「弘前城雪燈籠まつり」。春は弘前公園で行なわれる「弘前さくらまつり」。夏は勇壮な「弘前ねぷたまつり」。そして秋には春同様、弘前公園を舞台に「弘前城 菊と紅葉まつり」が開かれます。今年は10月19日から11月5日までの開催予定です。

公園内で色づくのは、約1000本のカエデと、春に咲き誇った約2600本の桜。赤と橙に染まり、古城の松の緑がアクセントとして加わります。そこに城壁の白、空の青、橋の欄干の朱が映え、さながら色彩のオーケストラといった厳かさと華やかさを醸し出します。


祭りの名にあるように、「菊」も祭りの主役です。同公園内にある弘前城植物園を中心に、北奥羽随一の豪華絢爛な菊人形、欧米の庭園風景によく見られる動物等をかたどった菊のトピアリー、丹精込めて造られた大輪、中輪、懸崖など、香り高い菊が咲き誇り、古城の秋に彩りを添えます。昨年はミニSLや動物とのふれあいコーナーなども設置され、大人のみならず子ども達も楽しめるお祭りとなりました。今年も数多くの催しが行なわれる予定です。

さて、弘前城以外のスポットもご紹介しておきましょう。市街から車で30分ほど西へ向かうと、勇壮な山の姿があらわになってきます。そう、“津軽富士”の名でも知られる岩木山です。山頂は例年9月半ばから色づき、しだいに紅葉が麓へ下ってきます。麓が色づく頃には山頂に雪が降ることもあり、まさに“富士の紅葉”といった、名画のような景色を堪能することができます。山の麓にある岩木山神社と高照神社の紅葉も、足を伸ばすついでにぜひ満喫してみてください。

そしてもうひとつ、見逃せないのは、岩木山と「りんご」のコントラストです。じつは弘前は、日本一の収穫量を誇る「りんごの街」。岩木山の麓にもりんご狩りが楽しめる「岩木山観光りんご園」があります。もぎたてりんごの甘さに舌鼓を打ちつつ、岩木山をバックに赤く照ったりんごの美しさをぜひ満喫してください。
   
小京都・弘前から少し足を伸ばして、近隣の紅葉の名所を巡ってみるのも一興です。市街から国道102号線を東へ進むと、東北随一の紅葉スポットと名高い十和田湖にたどり着きます。十和田湖は、火山活動で出来た窪地に雨水などが貯まってできた、二重式カルデラ湖。そのため湖岸が急勾配になっていて、紅葉の壁がぐるりと湖を取り囲むように迫り、その美しさとダイナミックさは圧巻の一言です。遊覧船に乗ると藍色の湖面に紅葉が映りこむさまが手に取るように見え、さらに美しさが際立ちます。見頃は例年10月下旬以降です。

この十和田湖から流れ出ている奥入瀬川、その焼山までの間の14キロメートルの渓流は「奥入瀬渓流」といわれ、こちらも十和田湖に負けず劣らずの紅葉スポットです。細かく分かれた流れが合流し、白く泡立つ荒々しい瀬を作り出している「阿修羅の流れ」、同じく渓流美の見事な「三乱(さみだれ)の流れ」、大小の岩が流れの中に点々とし、日本庭園のような美しさを備えた「九十九島(つくもじま)」、“ジャパニーズ・スモール・ナイアガラ”ともいわれる「銚子大滝」、二段に屈折して流れ落ちる「雲井の滝」など、物珍しく美しいスポットが次々と現れます。さらにここに紅葉の美が加わり、記憶に残る紅葉旅行になること請け合いです。

弘前城で小京都の秋を満喫し、西へ向かえば岩木山。東へ向かえば十和田湖と奥入瀬。どっぷりと秋の風情に浸れること間違いなし!の旅へ、ぜひお出かけください。
   
住所:青森県弘前市下白銀町1番地 弘前公園内(弘前城)
お問い合わせ:0172-35-3131(社団法人弘前観光コンベンション協会)
ホームページ:http://www.hirosaki.co.jp/(社団法人弘前観光コンベンション協会)
 
 
秋の弘前旅行でも、夏の夜の風物詩「弘前ねぷたまつり」を体感することができる施設があります。

それが津軽藩ねぷた村

高さ10メートルにも及ぶ大型のねぷたが展示され、暗い館内にぼんやりとした幻想的な光を放っています。そこに太鼓や囃子の実演が加わると、夏の夜の興奮を感じとることができるはず。

津軽の民工芸の製作体験ができるコーナーでは、金魚ねぷた、津軽凧絵、津軽土鈴(どれい)、弘前こけしなどの絵付けの他、あけびつる細工や津軽天然藍染などの体験が可能。津軽三味線の生演奏が聞けるコーナーもあり、津軽の文化をまるごと体感することができます。
 
今後の特集の参考にさせていただきます。
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