夏に涼しい場所といえば"地面の下"。真夏の太陽の強烈な日差しが届かないだけでなく、地中に含まれている水分は熱の影響を受けにくいため、"夏は涼しく、冬は暖かい"環境となります。地下の空間は、本来であれば涼しくてエコな場所なんですね。
そんな本来の地下空間を満喫できる施設が、埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路です。
もともと洪水が起きやすかったこの地において、この施設は"川と川をつなぐパイプ"の役割を果たしています。
埼玉県を流れる小〜中規模の川が増水した場合、まず水を縦に伸びた穴から地下に流し込み、6.3kmの地下トンネルを通じて、大きく氾濫しにくい江戸川へ流す仕組みとなっています。
裏を返すと、川の氾濫が危惧されて利用される時以外は、水のないからっぽの巨大空間になっているわけです。増水した川の水を取り込む縦のパイプは、直径30m、深さは70m。直径は学校の25mプールがすっぽり収まる大きさで、深さも含めると、なんとスペースシャトルが収まってしまうほどの大きさなんです!
また、トンネルの内部には、水の流れる勢いを弱めるための調圧水槽があります。水槽というと、中に熱帯魚が泳いでいるイメージですが、広さはサッカーのグラウンドくらいで、高さは18m、そこに水槽自体が浮いてしまうことを防ぐための重くて巨大な柱が59本。
画像をご覧いただくと、なんだかギリシャの神殿のようにもみえますね。こんな空間が街の地下に広がっていることを知るだけでも、大きな驚きといえます。
同施設では、個人、団体ともに見学会を開催中。ビデオや模型展示などで放水路の概要を解説してくれるだけでなく、巨大な調圧水槽の中に立ち入ることができます!地下に向かって階段を下りていくごとに気温が下がっていくことを肌で感じることができ、1年を通じておおよそ10度台に保たれている空間をぜひ満喫してみてくださいね。