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特集記事【2016年5/20日号】

古くから日本人の食卓を支えてきたお漬け物。その歴史は原始時代にまでさかのぼるといわれています。そのルーツは、海水からとれる塩。塩につけると食材が日持ちすることを知り、すでに2000年前の大和王朝の時代から重宝されていたそうです。

平安時代になると、食卓に欠かせない"名脇役"となります。ワラビやフキなどを塩に漬け、さらにこの頃になると酒粕やもろみなども使ってナスやショウガを漬けていたと文献に記されています。鎌倉時代になると、"香の物"という素敵な呼び名も出現。茶の湯や香道の席などでも重宝されるようになりました。

以降は、その地域でとれる食材や気候によって、地域色豊かなお漬け物が次々と生まれてきました。今月はそんなお漬け物に欠かせない発酵の話を交えながら、ご紹介していきましょう。
昭和の頃は"ぬか床"のあるご家庭が多く、キュウリやナスなどを漬けこんでいました。一旦下火になったものの、近年はそのヘルシーさや、ストックしておける便利さなどもあって、自宅でお漬け物をつける方も増え、スーパーでも「ぬか床」のコーナーが目に付くようになりました。

ぬか床を使ったお漬け物は、いわゆる発酵食品です。発酵は、現在の私たちにとって欠かせない自然のチカラ。お味噌や醤油、納豆に鰹節、チーズやヨーグルト、お酒、さらには医薬品、化粧品、洗剤など、世の中の至るところで発酵が用いられています。

発酵とは、微生物の働きによって元々のものが変化すること。一般的に、人間にとって有益な変化が生じることが"発酵"で、害をおよぼす物質に変化すると"腐敗"といわれます。

さて、お漬け物に話を戻すと、実は、発酵が作用しているものと、そうでないものがあります。"そうでないもの"の代表格が、これから旬を迎える梅干しです。

梅干しは、大量の塩に漬けるところから始まります。梅雨のさなかに漬けこみ、梅雨が明けて晴天が続く頃を見計らって天日で干し、そこから赤紫蘇を加えて再び漬け込むと、赤々とした梅干しのできあがり。そのしょっぱさ、酸っぱさは皆さんよく知るところですよね。

ではなぜ、梅干しは発酵しないのか。まずひとつは、他の漬け物に比べて使用する塩の量が格段に多く、微生物からも水分を吸収してしまうから。さらには、梅本来が含んでいるクエン酸の殺菌作用が強いから。微生物が死滅して働かなくなるため、発酵しないんですね。

かといって、健康食品ではないかというと、そうではありません。梅の酸っぱさが唾液分泌を促すことで食欲増進、さらにはクエン酸によって食中毒予防や疲労回復、動脈硬化の抑制や糖尿病予防など、梅干しはさまざまな効能が期待できる優れた食品です。ぜひこれからの季節、活用してくださいね。
続きましては、発酵のチカラを使った地域色豊かな漬け物の数々を、いくつかのカテゴリーに分けて紹介してみましょう。

まずは"北国系"。その特色は海の幸をうまく利用していること。北海道の「松前漬け」は、細切りしたスルメと昆布が主役。お酒や醤油、みりんを合わせた調味汁に漬けこみます。数の子を入れるケースも多いですね。

ちょっと変わっているのが、岩手の「金婚漬け」。大根や人参などの野菜を昆布で巻き、真ん中をくりぬいた瓜に詰め込みます。それを味噌で漬けたものです。古漬けするほど旨みが出ることから金婚式にちなんだとも、この地域で獲れるナマコ(方言だとキンコ)に形が似ているからとも言われています。

"青菜系"は、いちばんポピュラーといえそうなカテゴリー。日本三大漬物と呼ばれる福岡の「高菜漬け」、広島の「広島菜漬け」、長野の「野沢菜漬け」は、いずれも"青菜系"です。

近年、長野県は長寿県としてクローズアップされていますが、その一因かもしれないと思われているのが野沢菜。

もちろん、塩分のとりすぎはよくないため、野沢菜に限らず様々なお漬け物が塩分控えめで作られています。加えて、野沢菜は独特の酸っぱさが醸される乳酸発酵食品。世界的に長寿地方として知られるロシア・コーカサス地方の人びとも、乳酸発酵したヨーグルト好むこともあり、長寿と発酵食品の関連について研究が進められているところです。

次に紹介したいのが"有効活用系"。これは、調味料やお酒を造る過程で生じたものを、先人たちがなんとか有効活用できないだろうかと考えた末に生まれたもの、と定義づけましょう。となれば、栃木県日光発祥の「たまり漬け」。昔から味噌蔵や醤油蔵が多かったこの地では、味噌や醤油を造る際に生じる上澄み(たまり液)を活用しようと考え、日光高原で栽培されていた野菜を漬けてみたことがはじまりです。ラッキョウやゴボウ、ナス、キュウリなどを漬けこみます。

そして皆さんご存じ、奈良の「奈良漬け」。こちらは日本酒などを造る際、もろみを絞った際に残る「酒粕」を利用したもので、奈良時代にはすでに原型があったとされています。一般的に漬け込まれる野菜は白うりが有名ですね。ベッコウ色になる主成分「メラノイジン」は抗酸化作用やビタミン吸収をサポートする働きがあるといわれています。さらには酒粕の酸味が口の中をリセットしてくれるため、脂っこい食事の脇役としてもピッタリ。うなぎのかば焼きの付け合わせにもよく出てきますよね。ぜひ土用の丑の日に食べたいところです。

そして"京都系"。京都三大漬物は、柴漬け、千枚漬け、そして「すぐき(酸茎)」です。柴漬けは京都・大原の赤紫蘇、千枚漬けは京野菜の聖護院かぶ、そして「すぐき」は京都の伝統野菜「すぐき菜」と、いずれもこの地ならはの食材を用いたお漬け物ですね。

このうち、千枚漬けはもともと乳酸発酵がなされた食品でしたが、現在は酢に漬け込むことが一般的なようです。ラッキョウもそうですが、いわゆる酢漬けにすると、無発酵食品となります。酢に含まれる酢酸菌の殺菌作用が強いため、梅干し同様に微生物が働かないんですね。しかしながら、酢そのものが発酵食品です。発酵の恩恵を受けていることには変わりありませんね。
漬け置いて、場合によっては発酵によって食品の性質が変わる。これをお漬け物と呼ぶのなら、何も野菜に限ったことではありません。その代表例が、魚を漬ける"熟れずし"でしょう。

江戸前のいわゆる"握り寿司"が登場するずっと前、飛鳥、弥生、それこそ縄文の時代に、熟れずしの技法は大陸から伝わってきたといわれています。一言でいうと、炊いたご飯と魚を一緒にして、重石をしておくと乳酸菌を主とした発酵が促されます。ちょっと臭いと感じる方もいれば、「これが美味いんだよ!」という方もいて、好みが分かれる味わいになりますが、元々は他の発酵食品と同様に、日持ちさせる意味合いから生まれたといえるでしょう。

代表的なのは、滋賀県の名産品「鮒(ふな)ずし」。琵琶湖で獲れた鮒のうろこを落とし、卵巣以外のはらわたをくりぬき、塩を詰め込みます。これを桶に、塩と鮒、さらに塩といったように重ね合わせて漬け込みます。その後、鮒を取り出し、水で洗って塩抜きした鮒を、今後は炊いたご飯と一緒に漬けこみます。しばらくしてから腐敗を防ぐ目的で塩水を貼ります。

場合によっては、なんと3年ほど漬け込むケースも!!なぜ腐らないのは不思議といいますか、発酵のチカラ、恐るべしですよね。炊いたご飯で発酵させるというのも、今の私たちにとってはとてもユニークに感じますが、昔は農家などでご飯からどぶろくを作ったりしていましたので、そのルーツは古いといえます。

こうした熟れ寿司は鮒にかぎらず、北海道ではニシン、秋田ではハタハタ、和歌山ではサンマ、日本海沿岸ではサバなど、地魚で作られてきました。 もうひとす、お寿司ではありませんが、れっきとした魚の漬け物といえるのが、伊豆七島名産の「くさや」です。これも好き嫌いが大きく分かれる食べ物ですね!もともとは、干物をつくる際に塩を節約するため、海水に漬けては天日で干す作業を繰り返していましたが、その海水が発酵し、独特の風味を帯びた汁となりました。その汁を活用して漬けてみたところ、くさやができたというわけです。

生活の知恵によって育まれた、日本の豊かな漬け物・発酵文化。ぜひあらためて、その恩恵を感じながら日々の食卓に取り入れてみてくださいね。
今後の特集の参考にさせていただきます。
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