次に紹介するのは富士山の西側、富士川が流れる身延町。かつて日蓮聖人が入山して開いた身延山久遠寺です。境内にあるのは、「枝垂れ桜」。例年3月下旬から4月上旬頃にかけて境内の枝垂れ桜が一斉に咲き誇り、桃源郷さながらの風景が広がります。中でも圧巻なのは、樹齢400年といわれる巨大な枝垂れ桜。山高神代桜の樹齢2000年には負けるものの、大きな滝のように桜が垂れ下がる様は、思わず息を飲むほどです。なにより「枝ぶり」が見事。盆栽のような美しさが、天然で実現しているといったところでしょうか。 しだれ桜は久遠寺界隈にも広がっており、この周辺は日本さくらの名所百選に選ばれています。これら桜を一望したいのなら、久遠寺の裏手にある身延山ロープウェイに乗ってみましょう。全長はおよそ1.5キロメートル、山頂までの所要時間は約7分。ロープウェイに乗っている最中から、麓に広がる桜の木々を鑑賞できます。山あいの里が、おしろいで桃色の化粧したかのように染まってみえます。山頂には、かつて日蓮聖人が山を上り、両親と師匠に想いを馳せたといわれる「奥之院思親閣」があり、展望台からは富士山や駿河湾、南アルプス連峰、八ヶ岳連峰、秩父連山がパノラマとなって広がっています。ここでしか見られない風景を存分に味わってください。
富士山を間近で見たい、さらにそこに桜があればなおよし。そんな希望をお持ちの方におすすめしたいのが、河口湖の桜です。この地の桜は富士山麓に多く見られる「富士桜」。 例年4月下旬から5月上旬まで、薄桃色の桜の群落がアカマツの林に彩りを添えるように咲き誇り、その可憐な姿から「乙女桜」とも呼ばれています。開花時期と合わせ、河口湖創造の森では「河口湖富士桜ミツバツツジまつり」が開催され、観光客で賑わいます。 見どころのひとつは、河口湖の東岸に突き出した岬、産屋ヶ崎。湖に写る「逆さ富士」の名所としても有名で、かの松尾芭蕉はこの地で「雲ぎりのしばし百景つくしけり」と詠み、現在は句碑が建っています。桜のシーズンは例年4月中旬から4月下旬にかけて。ピーク時には写真愛好家の姿をあちこちで見かける、名所中の名所です。 河口湖南岸の中央には武田信玄ゆかりの神社、富士山中で最も古いといわれる冨士御室浅間神社(ふじおむろせんげんじんじゃ)があり、鳥居をくぐると美しい桜並木が私たちを迎えてくれます。花の頃は4月中旬から4月下旬にかけて。毎年4月29日には「流鏑馬祭り」を実施。駆ける馬上から的を射る伝統の技に、誰もが歓声を上げます。その姿と桜との調和もまた、日本の春の一幕といえるでしょう。