まず最初にご紹介するのは、夏目漱石と新宿界隈。新宿は漱石の生誕地であり、その生涯を終えた地でもあります。
東京メトロ東西線の早稲田駅。降りてすぐの早稲田前交差点から夏目坂を上るすぐ左手に
「夏目漱石誕生の地」碑が建っています。漱石が生まれたのは1867年のこと。今年は生誕151年目にあたります。ちなみにここから若松町方面に上る夏目坂は、漱石の父であり、当地の名主(役人)だった直克が名付けたのだそう。そのことを漱石は随筆『硝子戸の中』に書き記しています。
そのまま夏目坂を上り、左折してしばらく歩くと見えてくるのが「漱石公園」です。明治40年から没するまでの9年間、ここに建っていた漱石山房で『三四郎』や『これから』『こころ』といった代表作を執筆しました。
明治40年の漱石は、ちょうど前年に『坊ちゃん』を発表し、これまで勤めていた教職から離れて小説で一本立ちすべく決意した年でもあります。
現在、漱石公園には昨年9月オープンしたばかりの新宿区立漱石山房記念館があります。
1階の導入展示では、グラフィックパネルや映像を駆使して漱石の生涯や人となり、新宿との関わりなどを紹介。
再現展示コーナーでは、漱石山房の書斎や客間、ベランダ式の回廊などが再現されています。資料展示室には、漱石の作品世界の紹介をはじめ、氏とつながりがある文豪や人物の紹介や、漱石と俳句や絵画などとの関わり、草稿や手紙なども展示公開されています。
また、漱石の作品や関連図書を読みながら過ごせるブックカフェや、スイーツを楽しめるカフェ・ソウセキも併設。カフェには、氏の作品にも登場する、銀座の老舗和菓子店「空也」のもなかセットなるメニューも。
『主人はまたやられたと思いながら何も云わずに空也餅を頬張って口をもごもご云わしている』
―――夏目漱石『吾輩は猫である』より
大の甘党だった漱石ゆかりのメニューを満喫しながら一服してみるのがよさそうですね。ちなみに漱石公園の片隅には、石が積まれた塔「猫塚」があります。
これは『吾輩は猫である』のモデルとなった初代猫の13回忌にあたる大正10年に遺族によって建てられたのだとか。その後の震災や戦禍によって崩壊してしまいましたが、昭和28年になって区によって修復再建されました。
生誕地である碑と、終焉の地である公園。双方の距離はおよそ500mほどです。
休日のプチ散策として、ぜひ歩いてみてください。