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特集記事【2019年1/20日号】

さて今月は、美術館の特集です。
といっても、巨大な空間の中、無数の作品が並ぶところではありません。あえて注目したいのは"小さな"美術館です。

小さいからこそ、明確なテーマやコンセプトを打ち出して、すべてのスペースを使って展開することができます。また、かつて邸宅やアトリエだった建物をそのまま利用することで、住まいの空間がアート空間に変わる面白さや、作家の息遣いがありありと伝わってくる…それが小さな美術館の魅力といえます。

閑静な住宅街だったり、住居兼アトリエとして使用していた建物だったり、緑豊かな森の中だったりと、個性豊かな美術館の数々。さっそくご紹介いたしましょう!

東京・品川区の閑静な住宅街。そこにある原美術館は、1979年に当時としては稀少な現代美術専門の美術館として誕生しました。

その建物は、1938年に建てられた実業家、原邦造氏の洋風邸宅。東京国立博物館の現・本館や銀座の和光ビルなどを手掛けた渡辺仁氏の設計です。洗練された白い壁、中庭を包み込むように緩やかなカーブを描いた建物のカタチ…「戦前に、こんなハイソサエティな建物があったとは!」とまず驚かされることでしょう。

もともと居間やダイニング、寝室だった場所は、時期に応じて入れ替わる企画展示スペース。浴室やトイレなどは、アーティストに依頼して空間そのものが常設展示作品となっています。建物そのものをアートの視点から楽しめるところが特徴的です。中庭にも屋外常設展示作品が点在し、庭を望むカフェで一息つくのも気分爽快です。

現代美術に触れられるスペースとして機能してきた原美術館ですが、残念ながら2020年の12月をもって、40年間の歴史に幕を閉じることになりました。建物の老朽化などの理由からです。ぜひ今のうちにお出かけすることをおすすめします!

その一方で、原美術館の姉妹館にあたる「ハラ ミュージアム アーク」は健在。群馬県伊香保にある同ミュージアムは、広々とした敷地に木々の緑がふんだんに映え、アンディ ウォーホルをはじめとしたアーティストによる屋外の常設展示作品が設置されています。磯崎新氏の設計による建築も、アートのある空間にマッチ。草間彌生の大型インスタレーションを、ほぼ常設として長期展示しています。

現代美術に触れる休日を、ぜひ家族揃ってお過ごしください。
■原美術館/ハラ ミュージアム アーク
 ホームページ:http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/
日本の芸術家として、この人ほど知られている人はなかなかいません。メディアにしばしば登場することで、アート好きでない方にもよく知られている岡本太郎氏。その記念館が東京・青山にあります。

ここの建物は、もともと太郎氏が父の岡本一平氏から相続し、太郎氏が1996年に亡くなるまで自宅兼アトリエとして使用していた地です。およそ半世紀もの間、ここで暮らしながら絵画や彫刻、大阪万博の太陽の塔などの構想を練り、数々の作品を仕上げてきました。

記念館は、一言でいうと"賑やか"。居間だったスペースには「座ることを拒否する椅子」をはじめ、氏の作品やレプリカが、良い意味で雑然と置かれています。そこにたたずむ、太郎氏の全身をかたどって作られたというリアルなマネキン像も!マネキンになっても"圧"を感じるのが太郎氏たるゆえんです。

一方、アトリエは往年の姿のまま残されています。棚には無数のカンバス、机の上には筆や刷毛。作品も展示されています。

2階には、定期的に企画展が開催されています。太郎氏が生前に興味を抱いたモノやコトにまつわる展示や、太郎氏の影響を受けた現在の作家の作品展示など、バラエティ豊かです。展示室内で音楽のライブやトークイベントが開催されることもあります。

そして、見逃せないのは庭。オブジェの数々が居並び、それぞれが生命を持っているかのようにイキイキとしています。2階のベランダからは、太陽の塔をモチーフにした作品が見下ろしていたりと、遊び心も満載。これらの作品は実際に触ることもできます。また、記念館内すべて撮影OKというのも、アートスペースとしては珍しいですよね。庭を眺めながらティーブレイクできるカフェもありますよ。

ちなみに、今回ご紹介したのは「岡本太郎記念館」。川崎市には、氏の作品を数多く所蔵・展示している「川崎市岡本太郎美術館」があります。どちらも異なる魅力に溢れていますので、ぜひお出かけください。
■岡本太郎記念館
 ホームページ:http://www.taro-okamoto.or.jp/
さて、最後は森の中。一体どこかといいますと、東京都あきる野市にある"南沢あじさい山"の程近くにある「深沢小さな美術館」です。

同館は、この地に住む造形作家、友永詔三(あきみつ)氏の作品が見られる、文字通り"小さな"美術館。NHKの人形劇「プリンプリン物語」といえば、ピンとくる方もいらっしゃるのでは?友永氏は、その劇中に登場する人形を制作に携わった作家さんです。実際に使われた人形の数々が展示されています。

見事なのは作品だけではありません。この建物は、友永氏ご自身が年月をかけて作られたのだとか。アントニオ・ガウディの建築を思わせる有機的なカーブが美しく、自然豊かな周囲としっかり調和しています。併設されている喫茶室ではお茶やスイーツを楽しむことも可能。日常から離れ、童話の世界に入り込んだような気分で過ごすことができますよ。

ここでひとつご注意を。12月から3月にかけての冬季は閉館しています。おすすめは春のハイキングを兼ねて、もしくは南沢あじさい山のあじさいが見頃を迎える6月中旬から7月上旬にかけて、あじさいと共に楽しむのもよさそうです。ピークには約1万株(!)ものあじさいが咲き誇ります。

あじさい山まで、JR武蔵五日市駅北口から徒歩で約35分ほどかかりますので、マイカーで向かうか、もしくはハイキングとして出かけるのがおすすめ。道中の山道には、ところどころに友永氏が作った森の妖精キャラクター「ZIZI」の像が、「南沢あじさい山」「深沢小さな美術館」「食べものや 深沢小屋」の道しるべと共に立っています。まるで森の妖精に道案内されているような気分が味わえますよ!暖かくなる季節に、ぜひお出かけください。
■深沢小さな美術館(あきる野市観光協会)
 ホームページ:http://www.akirunokanko.com/?p=332
今後の特集の参考にさせていただきます。
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