続いてのアートな街は渋谷。駅前の「忠犬ハチ公」像はあまりにも有名ですよね。この像のみならず、渋谷にはハチ公ゆかりのパブリックアートが点在しています。
銅像のハチ公が向いている方向、すなわちJR渋谷駅の外壁に掲げられているのは、陶板レリーフ「ハチ公ファミリー」。画家の北原龍太郎氏が描いた原画を元に、約1200ピースを超える陶板で作られました。
実はハチ公には「クマ公」という子どもがいたという史実があります。その一方で、飼い主の帰りを待って寂しい思いをしていたのもまた事実。
ハチ公が家族をつくって幸せそうにしている様子を描きたい、という北原氏の想いが込められています。中心にいるのがハチ公で、その周りには20頭の秋田犬。太陽と月と宇宙。普段何気なく通り過ぎてしまいがちな場所ですが、込められた想いを知って眺めると、感慨もひとしおです。
次はガードをくぐってハチ公とは逆、山手線の内側へ。原宿方面に少し歩くと、2020年7月に開業した渋谷の新しいランドマーク「MIYASHITA PARK」の洗練された建築が見えてきます。かつて宮下公園が広がっていた敷地に建てられた複合商業施設ですが、その屋上は誰でも入れる庭園になっており、新・宮下公園として憩いの場になっています。
その庭園内にもハチ公の姿があります。アーティスト鈴木康広氏の作品「渋谷の方位磁針|ハチの宇宙」です。方位磁針に見立てられたスペースの中央に、空を向くハチ公。星になった飼い主・上野教授を見上げています。空の広さと、人々が行き交う渋谷の地を象徴するアートです。
他にも「MIYASHITA PARK」の南側エントランスには、ハチ公の末裔「きゅうちゃん」、屋上公園のボルダリングウォールの上には、天に棒を突き上げる猿の像「YOUwe.」、明治通り沿い歩道には多様な人々の融合を表現した「Any」といったパブリックアートが点在しています。
そして、JR渋谷駅と京王井の頭線を結ぶコンコースには、2008年から掲げられている岡本太郎画伯の巨大壁画「明日の神話」も見逃せません。原爆が炸裂する瞬間を描いた、氏の最大にして最高傑作との呼び声が高い作品です。
過去と現在、未来が交錯するような渋谷のパブリックアート。ぜひ訪ね歩いてみてください。