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特集記事【2008年12/20日号】

年始の風物詩といえば、なんといっても初詣。しかし、御利益はお正月の三が日だけしか授かれないかというと、そんなことはありませんよね。新春は受験シーズンでもありますから、入学試験が相次ぐ頃まで「天神様」は賑わいます。その他、七福神巡りや成人祭、果ては2月の節分に至るまで、新春は「神様が大忙し」の季節です。

そこでご提案。ご自宅からもっとも近い神社やお寺を詣でたあとは、「今年一年をどんな年にしたいか」「今年の自分はどうありたいか」を考え、「御利益別」にお参りをしてみてはいかがでしょう?

金運守護なら「弁天様」、学業成就なら「天神様」、商売繁盛なら「お稲荷様」、良縁を望むなら「竜神様」、旅路の安全は「猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)」といったように、それぞれの御利益にそれぞれの神様がいます。

そこで今回は、「商売繁盛」「金運向上」「健康成就」「学業成就」「恋愛運アップ(縁結び)」の5つの御利益別に、オススメスポットを厳選してみました。ぜひとも「願掛け」に出かけてみてください。
   

日本には商売繁盛をもたらすといわれるものがたくさんあります。

ダルマもそうですし、関西ですとビリケンさん。「福助」や「熊手」も商売繁盛の縁起物ですよね。

そして「招き猫」もしかり。前足をあげて招くようなポーズに、愛くるしい顔。純粋に愛らしい置物としても通用しますよね。

猫の天敵といえばネズミです。その昔、農産物や蚕を食べてしまうネズミを退治するとして、猫は尊ばれてきました。そこで「招き猫」は養蚕業の守り神として当初尊ばれ、その後は広く「商売繁盛」を司る縁起物となったそうです。 そんな招き猫の発祥地といわれているのが、東京都新宿区の自性院と、東京都世田谷区の豪徳寺。今回は豪徳寺を紹介してみたいと思います。

豪徳寺があるのは、地名にもなっている世田谷区豪徳寺。最寄り駅は世田谷線の宮の阪駅ですが、小田急線豪徳寺駅からものんびり歩いて10分程度の距離。

駅を降りてのどかな商店街を歩いていくと、さすが発祥の地といわれるだけあって、お店のショーウィンドーに飾られた招き猫をみることができます。

商店街を抜け、閑静な住宅街をしばらく行くと、立派な門が見えてきます。曹洞宗のお寺、大渓山豪徳寺です。
   
   
 
豪徳寺の招き猫は、元来「招福猫児(まねぎねこ)」。江戸時代、彦根藩二代目藩主だった井伊直孝がこの地に鷹狩りに出かけた最中、夕立に遭いました。どこかで雨宿りできないか・・・そう思っていると、豪徳寺の住職が飼っていた猫が手招きするようなしぐさをしている。誘われるままに寺に入り、住職の説法を聞いていたところ、雷鳴が轟いて稲妻が先程いた道に落ちた!これはまさに命拾い!そう感じた直孝は、感謝の意を込めてお寺の再建を約束したそうです。現にその後、豪徳寺は井伊家の菩提寺となり、かの大老、井伊直弼の墓もここにあります。一方、その猫はどうなったかというと、死後にお寺に片手をあげた猫の像として祀られ、人気を博したとか。それが「招き猫」のはじまり、というのが豪徳寺説です。

お寺の境内は広く、本堂をはじめ三重塔や仏殿などが点在しています。よくみると、三重塔にもところどころ猫の像が彫られています。秋は紅葉、春は枝垂桜「臥竜桜」など、自然も豊か。観音堂には猫観音が祀られ、その脇には招き猫と御札が飾られています。絵馬の奉納所を除くと、やっぱり絵馬にも招き猫が。それぞれに商売繁盛の願いが込められています。

そして、豪徳寺に行った際はぜひとも見ておきたいのが、観音堂左脇の招き猫奉納所。ちょっと奥まっていてみつかりずらいのですが、見つけた途端、思わず声を上げてしまうこと必至の数!お守りや破魔矢、熊手などは1年ごとに奉納することは知っていましたが、招き猫にも「奉納」があるとは知りませんでした。よくみると表情もさまざまで、思わずみとれてしまいます。ちょっと他では見られない、縁起の良い風景です。

もちろん、招き猫はお寺の受付所で購入することができます。小さいもので300円、特大のものですと5000円です。商売繁盛を願い、のんびりとした風情漂う豪徳寺散策をお楽しみください。
 
   
 
■豪徳寺
住所:東京都世田谷区豪徳寺2-24-7
お問い合わせ:03-3426-1437
 
 
世田谷の冬の風物詩といえるのが、世田谷線上町駅界隈で行なわれる「世田谷ボロ市」。毎年12月15・16日と、1月15・16日の計4日間催されます。

ボロ市とはすなわち「蚤の市」。元来は農機具を売買する市でしたが、年を追うごとに出品する物のバラエティが増えていき、現在のように「なんでもあり」の市となりました。骨董品や西洋のアンティーク雑貨をはじめ、日用雑貨、餅つきの道具、おもちゃ、着物や洋服、盆栽などの出店が連なり、「骨董市」と「フリーマーケット」を足したような市となっています。焼き団子やお餅、ソーセージなど地元の商店が繰り広げる縁日風の食べ物も、小腹を満たすには最適です。

400年以上の歴史を持ち、東京都指定無形民俗文化財に指定されている世田谷ボロ市。いつもはのんびりとした世田谷線沿線ですが、ボロ市開催中の上町駅界隈は人の波!豪徳寺からは歩いていける距離ですので、あえて電車に乗らずに歩いて出向いたほうがよいでしょう。
 
 
あるにこしたことがない「運」といえば、やっぱり「金運」ですよね。このところ不況のニュースが相次いでいますが、なんとか金運をアップさせて厳しい世相を乗り切りたい。そんな思いにかられている方は、上野の森を目指しましょう。

上野といえば、なんといっても上野公園。西郷さんの銅像をはじめ、東京国立博物館、国立西洋美術館、国立科学博物館、恩賜上野動物園などの文化施設も充実。その一方で、不忍池など自然に触れることもできるスポットとして古くから愛されてきました。その広大な公園は、もともと「寛永寺」の境内だったこと、ご存知ですか?

寛永寺は、江戸時代に三代将軍家光が創建。江戸の北東、つまり「鬼門」の方角を守るために出来たお寺です。境内の広さはなんと36万坪もありました。

春は比叡山の桜を、夏は琵琶湖をモチーフにして作られた不忍池の蓮を眺め、お寺をお参りし、池のほとりの茶屋で一服。そのあと谷中などで土産を物色・・・ それが江戸庶民の娯楽になっていました。いわば「日帰りのぶらり散歩」のはしりといえますね。

1868年、戊辰の役でお寺の建物のほとんどが焼失してしまいましたが、明治になってオランダの医師、ボードウィンが公園として整備するよう日本政府に嘆願し、日本初の公園に指定されました。寺の建物もいくつかが焼失を免れ、いくつかが再建されて、現在に至ります。
さて、「金運」の話に戻しましょう。目指すは不忍池にある「寛永寺弁天堂」。現在の寛永寺は上野公園の北に位置し、最寄り駅は鶯谷駅ですが、弁天堂は上野公園内の不忍池にあります。寛永年間、常陸下館の城主だった水谷伊勢守がこの地に建立し、昭和33年に再建されました。もともとは池にぽっかりと浮かび、お参りする人は舟に乗って出向くようになっていましたが、現在は橋が作られています。

弁天とは、仏教の守護神であり、七福神にも数えられる「弁財天」のこと。宝船に乗り、琵琶を持った女性として描かれている姿はお馴染みですよね。もともとは「弁“才”天」と書かれていましたが、やがて同じ音の“財”に転じ、財宝を司る神様として奉られるようになりました。芸能の神様としても有名です。

水とも関係が深く、池や湖のほとりに祀られていることが多い神様です。有名な鎌倉の宇賀福神社(通称、銭洗弁天)などは、境内に湧く泉の水でお金を洗うと金運成就するといわれています。

不忍池の弁天堂が賑わうのは、人々が願掛けをする新春と、大祭のある9月。特に9月の巳の日は「巳成金(みなるかね)」と呼ばれ、いっそうの御利益を授かることができるといわれています。

今の季節は、上野駅を挟んで東はアメ横商店街が賑わい、西は不忍池が渡り鳥たちで賑わいを見せています。都会の中で自然に触れつつ、金運を授かりに弁天堂まで足を運んでみてはいかがでしょう。
■不忍池弁天堂
住所:東京都台東区上野公園2-1
お問い合わせ:03-3821-4638
ホームページ:http://taito-culture.jp/history/kaneiji.html
 
先程もちょっと触れましたが、弁天様は七福神のうちの1人です。他の6人も、じつは上野・谷中界隈で祀られています。年明けに、7つの神様すべてをお参りする「谷中七福神」という催しに参加する人が大勢います。

七福神巡りの起源は古く、室町時代に京都で流行し、江戸時代には谷中の地でも行なわれていました。現在でいうところのスタンプラリーのような感覚ですね。谷中の他にも深川、千住、日本橋、浅草などでも七福神巡りがあります。

どの順に回らなければならない、というルールはありませんが、谷中七福神巡りのコースとして一般的なのは「福禄寿」の祀られている東覚寺(最寄は都バスの本駒込4丁目バス停)に始まり、「恵比寿」の青雲寺、「布袋」の修性院、「毘沙門天」の天王寺、「寿老人」の長安寺、「大黒天」の護国院、そして今回ご紹介した、弁財天のいる弁天堂を巡るコースです。もちろん、逆から巡ってもOK。

7つの御利益を授かれる七福神巡りは一年を通して出来ますが、1月1日から15日までの期間中は、それぞれのお寺で朱印を捺してもらうことができます(有料)。まさにスタンプラリー感覚です。新春にぜひとも巡ってみてはいかがでしょう。
 
 
巣鴨といえば、いつしか「おばあちゃんの原宿」というイメージが浸透しましたよね。その発端はやはり、この地にある曹洞宗萬頂山高岩寺、通称「とげぬき地蔵尊」でしょう。参拝客の中心はおじいちゃん、おばあちゃんですが、別に高齢の方々にしか御利益がない、というわけではありません。広く万人における「健康運」の御利益スポットとして今回ご紹介したいと思います!

もともと高岩寺があったのは湯島。そこから下谷に移り、明治時代に入ってから巣鴨に移ってきました。高岩寺本堂にある本尊、延命地蔵尊は秘仏。よって通常はみることができません。

その代わり、といっては何ですが、参拝客たちがすがるのは、境内にある観音様、通称「洗い観音」です。

観音様を自分の身体に見立て、痛いところや病の気がある部位をこすると効き目があるといわれています。つまり、胃を患っているなら観音様のお腹の部分を、肩が痛いなら肩の部分を洗うとよい、というわけですね。

ちなみに、もともとはたわしでゴシゴシとこする習わしになっていたそうですが、あまりに皆がこすりすぎて観音様が磨耗してしまったため、現在では白い手ぬぐいを使うか、手のひらで観音様をなでることが一般的となっています。参拝客が多い日には観音様の前にずらりと行列ができるほどです。
とげぬき地蔵尊を訪れた人が買って帰るものといえば、長さ一寸ほどの和紙に尊像が描かれた「御影(おみかげ)」。

高岩寺の本尊は秘仏ですが、御影にも同じようなパワーが宿っているといわれています。御影の使い方は、痛みが生じている部分に貼る。また、喉に魚の小骨などが刺さったときには、御影を浮かべたお水を飲むとよいとのことです。まさに「とげぬき」ですよね。ちなみに、実際のとげだけでなく、「心に刺さったとげ」まで抜いてくれるとのこと。「病は気から」といいますので、ストレスや悩みごとを抱えている人は、ぜひとも訪れて御利益を授かってみてはいかがでしょう。

さて、一年中賑わいを見せるとげぬき地蔵ですが、さらに多くの人々が訪れるのが毎月「4」のつく日。4日、14日、24日には縁日が開かれ、それにあやかって商店街の各店もセールを実施。200あまりの露店も出て、大賑わいとなります。

また、年三回行なわれる大祭にも一度は足を運んでみたいところ。1月24日、5月24日、9月24日の3日間です。この日には高岩寺の本堂で大々的に法要が行なわれ、僧侶達が読み上げる大般若経が境内に響き渡ります。10万人以上の人手を集める、東京屈指の大祭です。

年末年始の祭礼は、12月24日の「納め地蔵」、1月4日の「初地蔵」です。通常の縁日よりも多くの人出で賑わいます。

もちろん、普段もお祭りさながらの雰囲気がどことなく漂っているのが、巣鴨という街の特徴です。巣鴨地蔵通り商店街には和菓子屋、御茶屋、せんべい屋といったお店が立ち並び、古き良き門前町の雰囲気が漂っています。

高齢の方のみならず、あらゆる善男善女の皆さんにオススメしたいスポットです。
■曹洞宗萬頂山高岩寺(とげぬき地蔵尊)
住所:東京都豊島区巣鴨3-35-2
お問い合わせ:03-3917-8221
ホームページ:http://www.sugamo.or.jp/prayer_detail01.html
 
「猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)」は、旅などの道中の安全を司る神様。日本神話の「天孫降臨」において、ニニギノミコトを道案内したことが「道の神様」になった発端といえるでしょう。三重県の伊勢をはじめ、全国にはいくつもの猿田彦神社がありますが、巣鴨にもあるんです。それが都電荒川線の庚申塚駅すぐそばにある「巣鴨庚申塚 猿田彦大神」。巣鴨駅からですと、巣鴨地蔵通り商店街の終端に位置しています。

もともとこの地は五街道のひとつだった「中山道」と「王子道」の交差点であり、旅路を行く人々の休憩所として賑わいをみせていました。そんな交通の要所ですから、「旅の神様」を祀ることは至って自然だったといえるでしょう。

通常、神社の動物といえば犬や狐を思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、庚申塚の場合は猿。しかも「見ざる、言わざる、聞かざる」の三匹の猿が鎮座しているケースが一般的です。巣鴨庚申塚にも三匹の猿と、優しい笑みを浮かべた猿の石像が祀られています。その姿を見るだけでも一見の価値がありますよ。
 
 
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