地方に旅行に出かけると、その土地の名産品をギュッと詰め込んだ駅弁に思わず手が伸びるもの。しかし、東京において名産とは何なのか?東京名物を詰め込んだ駅弁はあるんだろうか?そのひとつの答えといえるのが、東京駅や品川駅など、都内各所で販売されている駅弁「深川めし」です。
この「深川めし」、テレビ東京の「出没!アド街ック天国」の駅弁特集で、北海道・森駅の「いかめし」や、かつて横川駅で売られていた「峠の釜飯」など、名だたる駅弁を抑えて、なんと第一位を獲得したことがあるんです。
深川めしとは、アサリを炊き込んだかやくご飯のこと。海のすぐ近くで、漁師や材木業で生計を立てる人々の多かった東京・深川において、彼らの「まかない食」といった感覚で庶民に親しまれていました。アサリもごくふつうに東京湾で採れていたんですね。
駅弁「深川めし」で使われているのもアサリ。少々粒は小さいながらもしっかりとした味付けです。その上に乗っているのが、これも江戸情緒をしのばせるアナゴの蒲焼とハゼの甘露煮。アナゴの蒲焼はふんわりと柔らかく、蒲焼のタレもちょうどいい塩梅です。アナゴはかつて、東京湾では大量に水揚げされていました。
ハゼもまたしかり。今でも夏から秋にかけて、江戸川の河口などでは老若男女が竿を出し、ハゼ釣りを楽しんでいます。こうした風景もまた、江戸時代からありました。江戸の町民たちはハゼ釣りを楽しみ、釣れたハゼを干物にしたり、お吸い物や雑煮のダシをとったりしていたそうです。そのハゼを甘辛い甘露煮に仕立ててあります。これがもう、ご飯が進む進む!甘露煮などの“佃煮”文化を育んだ、江戸の人々に感謝、感謝です。
その他、関東風のダシで煮たタケノコや、大根のべったら漬も美味。べったら漬けで有名だったのは東京・日本橋です。ちなみにカレーの添え物としてお馴染みの「福神漬け」は、東京・上野が発祥地といわれています。
さて、駅弁「深川めし」は、そんなに量が多くないにも関わらず満足度が高いところがポイント。これなら早朝、新幹線で出張に出かける方も「朝食」として楽しめる気がします。今となっては東京湾も埋め立てが進み、アサリやアナゴなど採れたとしても微々たるものになってしまいましたが、かつての江戸の庶民が味わった「深川めし」、ぜひとも駅弁で楽しんでみてください。