ご存知のとおり、「船」は海上交通の手段。その一方で、移動ではなく「船に乗ること」自体を楽しむ文化も培われてきました。平安時代の貴族たちは池に船を浮かべ、和歌を詠んだり月を眺めるといった「舟遊び」を楽しみ、江戸時代には武士や裕福な商人達が隅田川に「屋形船」を浮かべ、土手の桜を眺めたりしていました。
時は流れて昭和。戦後になると河川は汚れ、無骨な防壁ができたりして、とても「風流」どころじゃない・・・一時期、屋形船は廃れていたんです。しかしながら昭和の終わりくらいから東京の河川もきれいになり、再び屋形船を楽しもう、という気運が高まってきます。
そして現在、皆さんも一度は目にしたことがあると思いますが、四季を通じて灯りをともした屋形船がたくさん出ています。会社の飲み会などで使われることも増えてきましたよね。そんな屋形船が、もっとも繁盛するといえるのが花火の季節です。
では、屋形船での花火見物の流れを簡単にご紹介してみましょう。
まずはなんといっても予約。通常、屋形船は団体での「貸し切り」か、少人数でも乗船可能な「乗り合い」の2通りがあります。いずれも花火シーズンとなると、1年前くらいから予約される方もいるとか。まさにプラチナチケットですね。ただし、「乗り合い」の場合は、当日直前になってキャンセルが出るところも多いので、キャンセル待ちを実施している屋形船に申し込んでみるのもひとつの手です。
そして運良く予約を取り付けられたら乗船。花火大会当日は、じつにたくさんの屋形船が海上や河川上を埋め尽くすほど出船します。なので、花火がない通常の日よりも乗船時間が早めとなります。皆が乗り込んだ状態で、「水上の場所取り」をするわけですね。
花火が始まるまでの間は、屋形船の醍醐味といえるお食事。和食に舌鼓を打ちながらお酒を楽しみ、ほどよく酔いが回った頃に「ドーン」と花火の音が響く・・・あとは屋形船から花火見物。水面に乱反射する花火が美しく、「まさに江戸の粋!」といったひとときが訪れます。やはり一度は観てみたいですよね、屋形船からの花火。