底倉温泉は、箱根登山鉄道の宮ノ下駅と小涌谷駅のちょうど中間に位置します。他の箱根七湯に比べて旅館の数は少ない底倉温泉にあって、江戸の頃より旅館業を営んでいるのが「そこくらの湯 つたや」です。江戸時代に書かれた、今でいうところの箱根ガイドブック的な絵巻「七湯の枝折」にも、当時の旅館の姿が描かれています。
温泉は、同館の敷地内の岩盤から自噴している「蛇骨源泉」を使用しています。岩の裂け目から噴出する湯を採取して供給している点は江戸時代と同じ手法で、かなり珍しいといえます。さらに掛け流しの野天岩風呂にすぐさま注がれているため、鮮度の高い天然温泉の恵みをそのまま堪能できるのも嬉しいところ。大浴場も同じく「蛇骨源泉」が使われており、床や湯船には銘石として名高い「伊豆青石」があしらわれています。
旅館自体が切り立った蛇骨渓谷沿いに建っており、車道から若干離れていることも魅力のひとつ。川のせせらぎや木立のそよぐ音、鳥の鳴き声が耳に心地よく、自然の中でのんびりとしている気分を味わうことができます。
また、宿泊だけでなく日帰り入浴に訪れるお客も多く、2時間の「入浴のみコース」、午前10時から19時までの間、再入館可能な「湯ったりコース」、さらに個室が利用できるコースなど、旅のプランに合わせて選ぶことが可能です。
再入館できるコースは、ここを拠点にして日帰りで箱根散策したい方には最適かもしれません。
周辺には、先程紹介した太閤石風呂や太閤の滝のみならず、さまざまな見どころがあります。堂ケ島温泉、宮ノ下温泉、底倉温泉の鎮守である熊野神社は、湯の恵みに感謝する温泉の神様。また、芦ノ湖畔に鎮座する箱根神社の分社もあります。早川に沿って整備された堂ヶ島渓谷遊歩道も、自然を満喫するには最適です。
小田原攻めに成功し、天下統一をほぼ手中にした秀吉の“ひとっ風呂”は、さぞかし気持ちよかったことでしょう。遠く戦国の世に想いを馳せながら、底倉温泉でゆったりとした休日を過ごしたいものです。