唐突ですが、全国の都道府県のうち「海で泳がない」のはどこだと思いますか?おそらく皆さん、北海道や東北など、夏の短い地域を想像すると思いますが、それにも増して泳がないのが、実は沖縄県なんです。
ビーチにいる人のほとんどは、沖縄以外から訪れた観光客。常に強い日差しにさらされている沖縄県民は、たとえ海で泳ぐとしても水着の上にTシャツを着用する人がほとんどです。また、刺されると厄介なハブクラゲの存在を知っていることも海で泳がない理由のひとつ。さらにもうひとつ注目したいのは、海のかなたには「ニライカナイ」と呼ばれる神の国があって、海は神様や死者の魂が行き来するところ、という認識があるからです。そのため、先祖の霊が還ってくるお盆の時期などは特に海では泳ぎません。
沖縄県ほど、神々や精霊など目に見えない存在に敬意を払い、神々が生活と密着している地域は他にないといえます。家の門や屋根には魔除けとなるシーサーが置かれ、各家庭の台所には「火の神(ヒヌカン)」を祀る神棚があり、親族にたいてい「ユタ」と呼ばれる巫女がいます。2008年、沖縄県の学校の教室で、複数の生徒が過呼吸などで病院に搬送される事態が発生しました。その後、教室にユタが招かれてお祓いをしたという記事が、当時の琉球新報に掲載されています。新聞に、こうしたスピリチュアルな出来事が掲載されるということは、沖縄に住んでいない私たちにとっては驚きですよね。
そんな沖縄県において、最も位が高いとされる聖地が「斎場御嶽(せーふぁーうたき)」です。「斎場」は“最高位”を意味し、「御嶽」は琉球王朝が制定した聖域のこと。「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として、世界文化遺産にも指定されています。
斎場御嶽は、琉球を築いたといわれる始祖・アマミキヨが造ったといわれており、神女就任の儀式が行われたりと、祭祀場として使われてきました。また、かつては男子禁制で、男性は御嶽の入口で拝むことしか許されませんでした。御嶽内には大庫理(うふぐーい)などの拝所がありますが、パワースポットとして最も有名なのは三庫裏(さんぐーい)と呼ばれる場所。巨大な岩が折り重なり、三角形の隙間を造り出しています。実際にそこに身を置くと、神聖な空気を存分に感じることができると思います。
ちなみに、御嶽には真摯で穏やかな気持ちの時に入るようにしましょう。興奮状態ではしゃいでいて気分が悪くなった人も昔から絶えません。それほどまでに、強いパワーがみなぎっているといえるでしょう。
また、御嶽内には、岩の間からパッと海が開けてみえる場所もあります。冒頭でも述べたように、沖縄にとって海は聖なる場所。さらにその海の向こうにみえるのが、久高島(くだかじま)。始祖・アマミキヨが最初に降臨したといわれる“神の島”です。