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特集記事【2010年12/20日号】

テレビや女性誌などを中心に、頻繁に耳にするようになった「パワースポット」。歌手の安室奈美恵さんやモデルの押切もえさんがアメリカ・アリゾナ州セドナを訪れたりと、海外のパワースポットさえ取り上げられるようになりました。

セドナに広がる赤い岩山が隆起した風景は、大地にみなぎるパワーの象徴といえるでしょう。でも、単に景色が素晴らしいだけでなく、古くから北米大陸で暮らしていたネイティブ・インディアンの聖地として知られていました。それゆえ、パワースポットと呼ばれているわけです。

日本でパワースポットと呼ばれる地に、お寺ではなく神社が多いのも、仏教伝来以前から日本にあった「ルーツの古さ」が一因かもしれません。さらにルーツをさかのぼると、山や森など、自然のすべてに霊が宿っている「アミニズム」という考え方にたどり着きます。日本では「精霊信仰」などと訳されていますが、たとえば宮崎駿監督の映画「もののけ姫」の世界観といえばわかりやすいでしょうか。自然そのものを畏れ、敬意を表する考え方です。

ネイティブ・インディアンや古代の日本の人々は、そうした精霊を尊び、パワーの拠り所を察知し、その地を崇めました。それがやがて神社などの施設となり、現在「パワースポット」と呼ばれるに至るといえるかもしれません。

ではさっそく、2011年におすすめしたいパワースポットをご紹介していきましょう!!
春は「木の芽どき」といわれ、すべての生命のパワーがみなぎる季節。そんな春が一足お先に訪れる地といえば伊豆半島です。

伊豆半島は、日本屈指のパワースポットである富士山にゆかり深い地がたくさんあります。 特に東伊豆は、伊豆東部火山群が連なり、風水でいうところの「氣」が通る道(龍脈)が走っているということもあり、パワースポットに事欠きません。

まずは静岡県伊東市、伊豆高原に位置する大室山。標高581mと高くはありませんが、れっきとした火山です。注目したいのは、その姿かたち。高原にポツンと隆起して、お椀を伏せたようなかたちをしています。長野県松代市のパワースポットとして名高い皆神山(みなかみやま)にもどことなく似ています。ちなみに皆神山は「古代のピラミッド」説もあるんですよ!

昔の人びとは、船の上からこの山の姿を見て位置を確認するという、灯台のような役割も果たしていたといいます。現在、歩いて登山することはできませんが、リフトが整備されているので山頂までラクにたどり着くことが可能。すり鉢状の噴火口の底は、現在なんとアーチェリー場になっています。

その噴火口の中腹に祀られているのが、浅間神社。浅間神社といえば全国にたくさんある神社で、もっとも神格が高いのは富士山の浅間大社。富士山頂には奥宮があります。この富士山をはじめ、一般的に浅間神社で祀られているのは、木花咲耶姫(このはなさくやひめ)という、美人としても有名な神様。しかし大室山の浅間神社に祀られているのは、木花咲耶姫の姉、磐長姫(いわながひめ)なんです。この大室山と富士山は“姉妹”の関係にあるといえます。

神話では、邇邇芸命(ににぎのみこと)という神様に、この姉妹が嫁ごうとした際、磐長姫だけ返されてしまったんだとか。そんな磐長姫ですが、この大室山で無事に出産を果たしたといわれています。なんともかわいそうではありますが、そのかわりに妹は「木の花」のように、パッと散る短命さが備わり、姉には「磐=岩」のように未来永劫変わらない永遠性が備わったのだとか。そのため、大室山には、長寿をはじめ安産や母乳の出がよくなるといったご利益が伝わっています。

ちなみに、この神話に由来して「大室山に登って、そこから富士山を褒めてはいけない」という言い伝えもあるほどです。ただ、現在は磐長姫も「縁結び」の神様としても知られるようになりました。これは京都の貴船神社が磐長姫を祀っていて、平安歌人の和泉式部が、「貴船にお参りしたら、気持ちが離れていたダンナが戻ってきたワ!」と書き残していることに端を発するようです。
熱海に来宮(きのみや)」という駅があり、駅前に来宮神社があります。樹齢2千年を超えるいわれる大きなクスノキもあり、お薦めのパワースポットでもありますが、大室山から程近い距離にある八幡宮来宮神社も、負けず劣らずのパワーがみなぎっています。

伊豆高原駅から北へ徒歩で約15分。集落の突き当りといえる場所に、八幡宮来宮神社の鳥居が建っています。古びて威風堂々とした鳥居の質感と、まっすぐ伸びた巨木。人の気配はまったくありません。それだけで、ヒリヒリとしたパワーが伝わってくるようです。

鳥居をくぐると、あれ?社務所は右手にあるものの、肝心の社殿が見当たりません。一般的に、鳥居をくぐると左右対称に境内が広がり、正面にどーんと社殿が構えているものなのですが・・・。歩みを進めると、横幅が広い石段がみえてきます。というよりも、境内全体が階段状になっているような感覚。そこに点在する、小さな境内社。木漏れ日も少なく、うっそうとした雰囲気が神秘性を増しています。どこかで見た風景だな?と思っていると、そうです、屋久島の森の中にいるような気がしました。神社そのものもさることながら、森自体がパワーを蓄えているとでもいいましょうか。

階段を登り切ると、拝殿にたどり着きます。ここで祀られているのは譽田別命(ほんだわけのみこと)と伊波久良和氣命(いわくらわけのみこと)。譽田別命とは、第15代天皇・応神天皇のことですが、伊波久良和氣命が謎めいています。どの文献を探しても、“いわれ”がわかりませんでした。おそらく、もともとこの土地に祀られていた神様が転じたものなのでしょう。

拝殿の脇に、すっくと巨木が伸びているのも圧巻です。数々の神社を巡ってきましたが、拝殿のすぐ脇、この位置に巨木があることはめったにありません!この木からも、ひしひしとパワーを感じました。

実はこの森(社叢)は、シダの一種「リュウビンタイ」の自生北限地でもあり、さまざまな植物が生息していて国の天然記念物に指定されているんです。「屋久島っぽい」と感じたのも、なるほどとうなずけます。八幡宮来宮神社そのものは、まだパワースポットとして知られていませんが、ぜひとも東伊豆のパワースポット巡りのルートに加えてほしい神社です。
■大室山
 ホームページ:http://www.i-younet.ne.jp/~oh-murol/(大室山登山リフト)
■八幡宮来宮神社
 住所:静岡県伊東市八幡野1
 
唐突ですが、全国の都道府県のうち「海で泳がない」のはどこだと思いますか?おそらく皆さん、北海道や東北など、夏の短い地域を想像すると思いますが、それにも増して泳がないのが、実は沖縄県なんです。

ビーチにいる人のほとんどは、沖縄以外から訪れた観光客。常に強い日差しにさらされている沖縄県民は、たとえ海で泳ぐとしても水着の上にTシャツを着用する人がほとんどです。また、刺されると厄介なハブクラゲの存在を知っていることも海で泳がない理由のひとつ。さらにもうひとつ注目したいのは、海のかなたには「ニライカナイ」と呼ばれる神の国があって、海は神様や死者の魂が行き来するところ、という認識があるからです。そのため、先祖の霊が還ってくるお盆の時期などは特に海では泳ぎません。

沖縄県ほど、神々や精霊など目に見えない存在に敬意を払い、神々が生活と密着している地域は他にないといえます。家の門や屋根には魔除けとなるシーサーが置かれ、各家庭の台所には「火の神(ヒヌカン)」を祀る神棚があり、親族にたいてい「ユタ」と呼ばれる巫女がいます。2008年、沖縄県の学校の教室で、複数の生徒が過呼吸などで病院に搬送される事態が発生しました。その後、教室にユタが招かれてお祓いをしたという記事が、当時の琉球新報に掲載されています。新聞に、こうしたスピリチュアルな出来事が掲載されるということは、沖縄に住んでいない私たちにとっては驚きですよね。

そんな沖縄県において、最も位が高いとされる聖地が「斎場御嶽(せーふぁーうたき)」です。「斎場」は“最高位”を意味し、「御嶽」は琉球王朝が制定した聖域のこと。「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として、世界文化遺産にも指定されています。

斎場御嶽は、琉球を築いたといわれる始祖・アマミキヨが造ったといわれており、神女就任の儀式が行われたりと、祭祀場として使われてきました。また、かつては男子禁制で、男性は御嶽の入口で拝むことしか許されませんでした。御嶽内には大庫理(うふぐーい)などの拝所がありますが、パワースポットとして最も有名なのは三庫裏(さんぐーい)と呼ばれる場所。巨大な岩が折り重なり、三角形の隙間を造り出しています。実際にそこに身を置くと、神聖な空気を存分に感じることができると思います。

ちなみに、御嶽には真摯で穏やかな気持ちの時に入るようにしましょう。興奮状態ではしゃいでいて気分が悪くなった人も昔から絶えません。それほどまでに、強いパワーがみなぎっているといえるでしょう。

また、御嶽内には、岩の間からパッと海が開けてみえる場所もあります。冒頭でも述べたように、沖縄にとって海は聖なる場所。さらにその海の向こうにみえるのが、久高島(くだかじま)。始祖・アマミキヨが最初に降臨したといわれる“神の島”です。
沖縄へ旅行して、さらに沖縄本島から離島へ出かける方も多くいます。飛行機で石垣島へ出かける方や、フェリーで世界的なダイビングスポットである慶良間(けらま)諸島へ出かける方など様々ですが、それら島々へアクセスする空港も港も、大半は那覇近郊にあります。そんな中にあって久高島は、沖縄本島東部の知念安座真(あざま)港からフェリーで行き来する島。時間にして、片道20分程度と近いのですが、いわゆる「リゾート」な島々に比べて、観光客はさほど多くはありません。

島内には食堂が2軒、宿泊施設が5軒。もちろん、南国特有の砂浜などリゾート的な景色はそこかしこに広がっているのですが、他の島々とはちょっと違う雰囲気が漂っているのは、やはり“島全体が聖域”であるからでしょうか。とても静かで、穏やかな気持ちになります。

島内観光は、港の近くにあるレンタサイクルを利用すると便利。2時間もあれば、ゆっくりと自転車で島全体を巡ることができます。島の東側に広がる「いしき浜」は、ニライカナイから神々がやってきたときに船を停泊させる場所。また、島のあちこちに御嶽が点在しています。といっても、立派な祠や建物があるわけではなく、場所によってはほとんど「何もない」状態だったりします。自然そのものが信仰の対象になっているといえるでしょう。

そして、島の南北に延びる一本道を北へ。まっすぐ続く一本道の両脇にはサトウキビ畑。他にはなにもありません。あまりのすがすがしさに、自転車を走らせるだけで一生の思い出になることでしょう。その道の終点は、「はびゃーん」と呼ばれる岬。この岬が、アマミキヨが降り立った地。クバの木が群生する森はカベールムイといい、先祖の魂が宿る場所といわれています。

さらにもうひとつ、島には年間に20を超える、久高島独特の祭りや行事があります。行事ごとに男子禁制だったりと、独自のルールがありますので、事前に確認してから出向くようにするとよいでしょう。また、お祭りなどの日によって、島の北部への立ち入りが規制されることもあります。

「手つかずの自然」という言葉がありますが、それはまさに久高島のこと。抜けるような青い空と海、延々と続く白い砂浜、そして島が大切に育んできたスピリチュアルな精神を、心ゆくまで満喫してみてください。事前に島の風習や伝説を調べてから行くと、いっそう味わい深い旅になることでしょう。
■斎場御嶽
 ホームページ:http://www.city.nanjo.okinawa.jp/2/1812.html(南城市)
■久高島
 ホームページ:http://www.kudakajima.jp/
 
東京のパワースポットの中で、もっとも有名といえるかもしれません。大正9年11月1日に創建された明治神宮は、例年のように初詣参拝客数が日本一を記録。皆さんの中にも、お参りに行かれたことのある方も多いのではないでしょうか。

霊峰・富士山と茨城県の鹿島神宮をつなぐ直線上には、この明治神宮や皇居(江戸城)があります。風水における「氣」が流れているともいわれていることから、昔の人々はこの直線上に主要な場所を設けたのではないか、といわれています。

その明治神宮をパワースポットとして一躍有名にしたのが、境内の一角にある「清正井(きよまさのいど)」でしょう。参拝客の多い日には、この井戸をみるための待ち時間ができるほど。携帯電話のカメラでこの井戸を撮影し、待ち受け画面に設定すると運を招く・・・と話題になっています。

この“清正”とは、戦国武将・加藤清正のこと。かつてはこの地に、熊本藩主加藤家の別邸がありました。加藤清正は朝鮮出兵のおりに「虎退治」を行った伝説が残るなど勇壮な武将として知られている一方、築城技術に長け、熊本城や名護屋城、江戸城を造る際にも貢献しました。治水の知識も持ち合わせていたことから“土木の神様”という異名もあるほどです。清正井自体、加藤清正が自らの手で作り上げたかどうか、正確な資料はありませんが、湧水を引く高度な技術が採用されていたことから、真実味をもって伝えられています。

そもそも、現在の東京に“自然な湧水”があるというのも、珍しい話ですよね。また一般的に、井戸には「水神」が住んでいると昔からいわれています。現在でも、井戸を埋める際には「水神上げ」といわれる儀式をしてから埋めることが暗黙の了解になっています。
清正井だけでなく、明治神宮の「良い氣」は、森にも感じ取ることができます。いわゆる“神宮の杜”です。東京ドーム15個分に値する広大な森は、人工的に造られました。

創建時、この地に広大な社叢(森)を作るということで、全国津々浦々から樹木の奉納が相次ぎました。その数、およそ10万本。このうち、東京の気候になじんだ246種の木々が残り、現在は17万本を数えます。

四季折々の顔を見せる神宮の杜ですが、派手な花は特にありません。そこに広がっているのは、おごそかな森。木漏れ日の中、鳥のさえずりを耳にしながらゆっくりと散策すると、どこまでも心が澄み渡っていくかのようです。原宿側に位置する南参道の玉砂利も、踏みしめて歩くとシャリシャリと音が鳴り、心が落ち着いてきますよね。都会の喧騒から一歩、鳥居をくぐると静寂が訪れ、ピリッとした空気を感じて、聴覚が研ぎ澄まされることもパワースポット巡りの楽しさです。

広大な境内をゆっくりと散策した後、もしお時間のある方は、程近い距離にある代々木八幡宮へも足を運んでみましょう。こちらも昨今、強力なパワースポットとして注目を集めている場所です。

山手通りから石段を登り、少し歩くと社殿がみえてきます。この参道を歩いている時から、敏感な方はパワーを感じ取ることでしょう。社殿はこぢんまりとしているものの風格があり、応神天皇、いわゆる“八幡様”が祀られています。八幡様といえば武神としても名高い神様。戦時中は、戦地に赴く人々が地元などの八幡宮を訪れ、武運長久を祈ったといいます。

位置としては、明治神宮の南西にあたる代々木八幡宮は、明治神宮にとって「裏鬼門」にあたります。北西の鬼門、南西の裏鬼門には強力な守りを固める聖地を置くことが、昔からの習わし。江戸城は、神田明神が鬼門を守り、赤坂の日枝神社が裏鬼門を守る役割を果たしていたといわれています。そう考えると、この代々木八幡宮が強大なパワーを発していてもなんらおかしくはありません。

原宿から神宮の杜を抜け、代々木八幡宮へ赴くパワースポット散策。運動不足になりがちな冬、程よい距離を歩きながら、土地からパワーをもらってみてはいかがでしょう。
■明治神宮
 ホームページ:http://www.meijijingu.or.jp/
■代々木八幡宮
 ホームページ:http://www.yoyogihachimangu.or.jp/
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